現実世界を舞台にした異世界物の作品。
ラノベ文化や異世界物を意識した作品となる予定。
社会不適合者となった主人公「やる夫」の救済と自立をテーマとする。
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設定・プロット
【プロローグ】
やる夫は天井をじっと見上げ、ある決断をする。
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【社畜編】
やる夫「毎日残業、毎週休日出勤。家に帰る余裕どころか食事を摂る暇すら無いお。これはお寺の断食修行か何かかお?」
ITエンジニアの「やる夫」は長時間労働の日々に耐え切れず、会社を辞める決意をする。
上司に引き止められ、昇給を提示されるも辞退。(もう遅い)
デスマで消耗する企業戦士たちを横目に颯爽と退職。
【無職編】
退社の手続きを終え自宅に戻ると、そこには異世界からやってきた年下の魔法幼女がいた。(向こうからくるパターン)
- メイド幼女として住み込み始める(フェミニストを煽っていくスタイル)
- ヒロインは引きこもりニートを庇護する母親の役割を担っている
- この過酷な現代社会で多くの若者たちが年下の幼女キャラに「バブみ」を感じ「オギャり」たがるのには、幼児退行への願望と母性への渇望があるためではないか
- この幼女キャラという存在は、オタクにとっての「なりたい自分」であると同時に「守られたい相手」ともなっている
- 引きこもりニートにとっての自宅は子宮の象徴といえる。この世に生まれ落ちたことの苦しみから逃避し、安全な家庭に閉じこもり、母親の愛を再確認し、果てには胎内へと回帰し胚人(廃人)と化す。そこから再び生まれ落ちた者は後に救世主となるだろう
【求職編】
やる夫で学ぶ失業保険
やらない夫登場。失業保険の存在を知らされる
- やらない夫は青春時代からの相棒
- 近所に住んでいて色々なアドバイスをくれる解説担当
- 協力的な人物だが、内心ではやる夫の更生を快く思っていない
- やる夫よりも優位な立場にいる自分に優越感を抱いている
- 自身の不幸の原因とその責任を社会の側に求めようとする「やる夫」を時に肯定するが、それは「やる夫」の向上の機会を奪う行為に等しい
- なぜか職業訓練校の講師が「やらない夫」
- こいつどこにでもいるな(バーの店主、役所職員、面接官、海の家の店員)
- いずれも本人かどうかは不明
- やる夫「やらない夫なんでこんな所にいるんだお」
- やらない夫「は?」 やる夫「え?」
ハローワークに通う
- 麻生太郎に似た相談窓口のおじさんに根性論を押し付けられる
- 自己肯定感が低下し自分を責めるようになる
- 優しい美少女相談員に励まされなんとか自信を取り戻す
- ハローワークの前にいる怪しい日雇い斡旋業者に単発の仕事を紹介してもらう
- 手配師もやらない夫に似ている(例によって本人かどうかは不明)
- やる夫「一応聞くけど やらない夫かお?」
- やらない夫「は?」 やる夫「ですよねー……」
- 大型のワゴンで山奥の工事現場に連れられ死体処理の仕事をさせられる
- 日雇いホームレス「どうやらトラックに轢かれた若い兄ちゃんの遺体らしいよ」
- 手配師もやらない夫に似ている(例によって本人かどうかは不明)
ヒロインの正体は「やる夫」の妄想であったことが判明
- やらない夫には見えていない
- やらない夫「お前さっきから誰と話しているんだ?」
- 異世界から来た存在だから自分にしか見えないのだと言い張る(謎理論)
- やる夫は精神的に病んでいた
- 自分には世界を変える特別な使命があると思い込み始める
- 行動力のある狂人設定(ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)
- 無職の男が底辺社会でさまざまな冒険を繰り広げる
人は自分や社会を変えられないから環境を変えようとする。現代の若者にとっての異世界はそのための逃避と自己肯定の場ではないか。やる夫にとっての異世界と救いは未だ見ぬ社会の底辺にある。上にのし上がれないことを悟り、挑戦して失敗することの恐怖と敗北を恐れ、やる夫はそこから逃れるように下の世界へと落ちてゆくことを選んだ。やる夫は現実の中に異世界を求め続けている。社会の底辺へと溶け落ち、何かを探し続けている。そこに救いはないとわかっているはずなのに、彼はそこに希望を求めずにはいられない。
精神科の受診を勧められる
- 竹中平蔵に似た医師に自己責任論を説かれる
- 別の病院の医師(白衣の幼女設定)のもとへ通う
この物語では基本的に「男性は自分を責める敵」のような存在として描かれる予定である。また「女性は包容力のある女神や聖母」のような存在として描かれているが、この手の慈悲深い女性像というのも、場合によりけりであり実態にはそぐわないこともある。実際は劣等な男性を嫌悪し排斥しようとする女性もいれば、劣等な男性を気にかけ仲間として受け入れようとする男性もいる。
男性というのは、男性社会から排除されることの恐怖よりも、女性集団から嫌悪され排斥されることの恐怖の方に強く怯えているものなのではないだろうか。社会は女性の要請に答える形でイレギュラーな男性を排斥する。女性に拒絶されるということは、すなわちこの社会から拒絶されるということと同義である。
現代の持てない男たちはなぜ声を上げる女性たちを憎むのか。それは女性に主導権を握られることへの不満(不安)、そして自分たちが排斥されることへの恐怖に怯えているためではないだろうか。
やる夫は自分を卑下し悲観的に物事を考える傾向にある。
やる夫は女性との関係性を避けがちな男性として描かれる予定である。恋愛競争を避ける行為は性役割や男らしさの重圧から逃れる行為とも重なっている。やる夫が競争から距離を置くのは焦燥感や敗北感・無力感から逃れるためとも考えられる。しかしやる夫の更生と自立は競争社会への参加なくして成り立たないという構造がこの社会の根底に存在している。
男性は女性の存在によって大いに救われるが、やる夫にとってのそれは空想の女性であり、それは救いであると同時に呪縛にもなっている。
やる夫が女性を避けるようになったのには過去に亡くなった幼馴染との出来事が関係している。その幼馴染はヒロインと瓜二つの姿をしており、やる夫はそのことに始めから気づいていたが認めようとはしなかった。彼女の言う「異世界」とは「あの世」のことである。
欲を手放した先には空ろな無が待っている。生と性は互いに重なり合い、その両脇には死と止が横たわっている。不安定な生の一本線の上で片足立ちしている変わり者、それがこの男「やる夫」である。
(中二病ラノベにありそうな文章)
生活保護の相談窓口を訪れる
ひろゆき似の相談員に論破され追い返される
- まだ働けると思うんですよ
- それ、あなたの個人的な感想ですよね
- なんか、そういう客観的な書類があるんですか?
- なんだろう、甘えるのやめてもらっていいですか
やらない夫「もう生活保護しかないだろ」
やる夫「手続きに行っても追い返されるに決まってるお」
やる夫「やる夫の中のイマジナリーひろゆきも『甘えるのやめてもらっていいですか』って囁いてるお」
やらない夫「そんな空想上の他人の声よりも自分の意思を大切にするべきだろ」
やる夫はネガティブ思考でいつも他人の目を気にしており社会的な空気や抑圧・世間体に縛られやすい性格。
「イマジナリー世間」という言葉が考えられるが、そもそも世間そのものがイマジナリーな存在ではないか。人々は世間という極めて曖昧な存在を必要以上に意識することによって苦しんでいる。
やる夫「鬱は甘えではなく、むしろ甘えられない人間が鬱になるんだお。鬱は甘えという、そういう心無い言葉が人々を苦しめているんだお」
やる夫「今は生活保護を受けるよりも刑務所に行くほうが簡単だお」
やらない夫「おう・・・、とりあえず、そのガソリンはしまえ」
【ネットビジネス編】
やる夫は現実社会への復帰を断念しネット世界での活動を決意
- ネット上で何万円もするプログラミング教材を購入
- 気づいたら何故かWordPressブログを作らされていた
- やる夫「プログラマになろうと思っていたらブロガーになってたお」
- これならネットの情報とプラグインで十分だろとやる夫憤慨
- アフィリエイト・広告ビジネスの時間対効果の悪さに気づく
- 怪しい情報商材に騙される(買った商材を別のカモに売れという内容)
- プログラミングスクールに入会・挫折・退会(高額の違約金を支払わされる)
- 危うく「学習サロンを作るための学習サロン」というマルチ商法まがいのサロンに入会しそうになる
- クラウドソーシングの稼げない現実に直面
胡散臭いビジネス界隈への理解と注意を促す回として描く。イケダハヤ夫が登場。
やる夫はもともとITエンジニアではあったが、上流工程に携わっていたため、プログラミングスキルは殆ど無いという設定。
やる夫「でも実際に成功してるサロン会員だっているお」
やらない夫「サクラに決まってるだろ論理的に考えて」
この世界で目に見えているものの全てはフィクションである。
【ビットコイン編】
大損する
やる夫「なーにがFIREだお、こちとらNEETだお」
これからは極力働かずに気楽に生きる「マイルドニート」な生き方が求められていくだろう。FIREでもNEETでもなく、これからは「MILD」の時代である。
やる夫「これからは少ないエネルギーで生きていく省エネ人生の時代だお。これこそSDGsな生き方だお」
やらない夫「ユーチューバーみたいなこと言い出したな」
「好きなことで生きていく」
やる夫「社会貢献も兼ねて短時間労働でも始めるかお」
やらない夫「それFIREでの生活が苦しくなってきた人たちが言い出しそうなセリフだな」
【アルバイト編】
やる夫、フリーターデビューする。
この過酷な社会の中で、やる夫は責務を果たすことに生きがいを見いだせなくなってしまった。人と共に生き、頼られ、助け合うことの喜びを忘れてしまったのだ。
やる夫「責任を負わない人生が一番楽で安心なんだって気づいたお」
やる夫「だから出世はしたくないし恋人も子供もいらないんだお」
責任とノルマの少なそうな非正規労働の道を取るものの、上司から理不尽な要求や不毛な作業を押しつけられ、底辺労働現場の世知辛い現実を知る。
小泉進次郎に似た無能な上司にほとほと疲れ果てる。
やる夫は社畜の現実から逃れるために異世界もとい底辺の世界へと転身したが、結局は資本主義社会の束縛から逃れることはできないばかりか、搾取の構造により強く縛られる形となってしまった。
「サラリーマンは会社の奴隷、フリーターは社会の奴隷だお」
【宅配編】
フードデリバリーと軽貨物ドライバーの仕事を始める。
- 1日12時間以上、全力で配達しても15000円の収入
- 経費を差し引くと割に合わない仕事であることに気づく
- 駐車違反を犯せば15000円の違反金で一日の働きが無駄になる
- 営業ナンバーを配慮するような制度はない
- 営業ナンバーだからといって取締りが甘くなるようなこともない
駐車違反のきっぷを切られ、やる夫ブチ切れる。
緑のおじさんと口論になり警察に連行される。
しかし駐車監視員にもノルマがあり生活や家庭がある。彼らもまた、やる夫と同様に、懸命に働く肉体労働者たちなのである。
格差社会における争いは弱者同士の間でしか起こらない。搾取する側の資本家と政治家は今日も安全圏で争い合う弱者たちをただ悠々と眺めている。
やる夫は握った包丁をしまうと、その駐車監視員の自宅に背を向け、もと来た道を足早に引き返していった。
【シェアハウス編】
やる夫ヒッピー化する
やる夫「日本の若者はストライキをしないと言うけれど、若者は声を上げないだけで、きちんと行動で示しているんだお」
自宅で座り込みを続ける引きこもりやニートたちがその最たる例である。社会人経験者が引きこもりやニートになるケースの方が実は多い。出世を求めず、極力働かず、無料のコンテンツで満足し、値引きシールの貼られた安い食事で細々と生きる省エネ志向のマイルドニートも増えてゆくことだろう。
やる夫「やる夫が働かないことで、社会の問題が浮き彫りになる、やる夫はそういうことに生き甲斐を感じるんだお」
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格差社会とシルバー民主主義の甚だしい現代に生きる若者たちは、自分たちのどうにもならない不利な立場を踏まえた上で、そこから最も確実で合理的な選択を導き出した。それはすなわち怠惰に生きるという選択であり、その世代の自己犠牲によって社会は否応なしに変化を迫られることとなる。引きこもりやニート、単身主義、治安悪化、薬物蔓延、働き手の不真面目という現象は、我儘や怠慢・自堕落と言った単純なものではなく、それは若い世代が自らの主導権を取り戻そうとする生物的な振る舞いでもある。これはこれまでの社会がもたらした結果であり、生物の本能に根ざした振る舞いなのだから、既得権益者たちがどう騒いだところでこの流れを変えることはできないのである。
富裕層の蓄えた富の多くは、搾取にあえぐ労働者たちの犠牲の上にもたらされたものである。労働者が考えるべきは、その富をいかにして取り戻すかということである。
時間と健康は決して奪われてはならない最も重要な資産である。その資産は社会を変えるために使わなければならない。
人は自由を取り戻すためなら命を捨てることさえ厭わない。
やる夫「社会不適合者に社会への適応を求めることは明確な抑圧であり差別です」
やる夫「現代は自由と多様性の時代です。働かない自由だって保証されるべきですし、それを否定し差別する人たちは間違っています。社会には私たち弱者の生存の権利を保証する義務と正義を求めます」
やる夫「シンナー臭い部屋だお」
やる夫「こいつなんでこんなに風邪薬たくさん持ってるんだお?」
やらない夫「オーバートーズだろ、常識的に考えて」
【新興宗教・教祖編】
ヒロイン「髪を切ったんですね、坊主も似合ってますよ。けど髭は剃ったほうが良いですね。最近風呂に入ってますか?ちゃんとご飯食べてますか?日を浴びて運動しましょう」
やる夫「・・・」
引きこもりニート向けの更生施設と宗教法人を立ち上げ、多くの信者を獲得するが、出資者の「できる夫」にすべてを乗っ取られる。
更生施設は反社会的組織に引き継がれ、現在はニートに精神病を偽装させて生活保護費・障害年金を奪い取る囲い屋がその組織のシノギとなっている。
やる夫はある決断をする。
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【テロリスト編・パターン1】
やる夫「もう終わりだおこの国」
やらない夫「いやお前が終わってるんだろ常識的に考えて」
ヒロイン「やる夫さんが不幸なのは社会が変わらないからではなく自分を変えられないからです」
更生施設の実態を告発するものの、警察はまともに取り合おうとはしない。
やる夫は警察と組織がグルである可能性を疑い始める。
やる夫「そうだお、霞ヶ関に凸るお」
やらない夫「(何言ってんだこいつ)」
もう失うものは何もない。
【テロリスト編・パターン2】
やる夫、宗教施設に立てこもり、放火。
殺る夫「できる夫を殺るお」
やらない夫「(何言ってんだこいつ)」
今のやる夫の前には夢を語るかつての信者たちはもういない。やる夫は信者たちの無気力で自堕落な有様にかつての自分を重ねる。
やる夫「やる夫が始めた物語はやる夫が終わらせるお」
生まれ育つ環境がその者の人生を形作る。ゆえに不幸な人生を負った者の責任は、本人ではなく環境や社会の側に見出すこともできるだろう。しかし始まりがどうであれ、社会がどうであれ、人生における様々な選択は紛れもなく本人自身が行っている。
人はなぜ意識や意思を持つのか。それは自身の宿命に抗うためだろう。人生を悲観し自身の境遇に絶望したその上で、その後にどのような選択を取るかによって人生の価値が決まる。
やる夫の選択は宿命が生み出したものか、それとも意識が生み出したものか。
本作における「やる夫」の成長と自立は青年期のそれと重なってる。大人になるということは社会の現実を受け入れるということなのだ。
そして大人になれなかった「やる夫」はテロという選択をした。
しかしそれは、どん底を生きてきた人間にしかできない選択なのである。持てる者が義務を負うように、持たざる者もまた義務を負い、その自らの役割を果たさなければならない。そうやって社会は変わってゆく。持てる者たちが社会を変えないのなら、持たざる者たちが社会を変えていく他ない。
やる夫「倫理が自死を否定できないように、社会はテロを否定することができないんだお」
やる夫はできる夫に腹部を刺される。
床に倒れ込んだ「やる夫」は天井をゆっくりと見上げる。
【異世界編】
やる夫「ここはどこかお?」
やる夫「あの川の向こうには何があるんだお?」
やる夫は破滅への道を自ら歩み続けてきた。それは決して前へ進むためのものではない。やる夫はこの世を去ることの理由を探す旅をしてきたと言える。この世界に見切りを付けるための旅だ。この世が生きるに値しない世界であることを、その身をもって証明しようとした。
しかし同時に、やる夫はこの世界を諦めきれなかったからこそ、底辺でもがき続けてきたとも言える。これは微かな希望を探し続ける旅でもあったのだ。現世への未練を捨てきれないからこそ歩み続けることができたのだ。本当は前に進んでいるという実感が欲しかっただけなのだ。
過去を振り返る度に、たとえそれがどんなに辛い時期の過去であろうとも、あの頃は良かったなと、ふと感じることがある。今は絶望の時代で、誰もが悩みや苦しみを抱えながら生きている。数年後に今を振り返ったときに、同じようにあの頃は良かったなと思えるように、今この時この瞬間を精一杯生きるしかない。
困難の中に見出す微かな幸せこそが掛け替えのない幸せなのだとしたら、我々は今この時この瞬間に、この目の前にあるささやかな幸福に気づき、その存在に寄り添うべきである。
人は死そのものを恐れているのではなく、何もしないまま死にゆくことを恐れている。人はその恐怖から逃れ安堵の最期を迎えるために、今を精一杯生きている。
やる夫「どうせ死ぬなら人生の絶頂を迎えたその瞬間にこの世界を去りたいって思う時があるお」
ヒロイン「やる夫さんが望むなら、もう一度人生をやり直すこともできますよ」
ヒロイン「あなたと出会うことのない未来になら、より良い人生があるかもしれません」
やる夫「この世界はループものみたいにやり直しは効かないし、理想の世界は向こうからはやって来ないんだお」
【ループ編】
決断の日に時間が巻き戻る。
やる夫は天井をじっと見つめている。
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「決断の日」がいずれのものであるかは明かされない。
物語上では、この後すぐに再びの決戦の舞台へと移る。
「やらない夫」は「やる夫」を庇って命を落とす。後半のやらない夫は兄や父親のメタファーとして描かれる。
【エンディング】
やる夫が更生と自立を決意するということは、すなわち妄想のヒロインとの決別を意味する。
やる夫「始めから独りだったんだお」
ヒロイン「やる夫は救われたのですか?」
やる夫「・・・」
やる夫「他人を救うということは自分を救うということなんだと思うんだお」
やる夫「これからは他者のために生きていこうと思うお」
やる夫は犯した罪を償うため刑に服する。
この世界に一人取り残されたやる夫の見上げる空は、どこまでも青く澄んでいた。
基本設定
やらない夫は成仏できなかった霊である
この世への未練によって生き続ける亡霊。底辺でもがき続けたやる夫とは違い、彼は早々に死を選んだ。自分が霊であることに気づいていない。
やらない夫はやる夫にとっての兄や父親のような象徴として描かれる。
やる夫のナルシシズムについて
やる夫は擬似的な死を経験することで新たな自分に生まれ変わろうとする存在である。
【真エンド】
刑務所の広場でやる夫はかつての信者に腹部を刺される。
仰向けに倒れ込むやる夫。
青く澄んだ空を見上げる。
やる夫の死の運命を変えることはできない。
しかし人は皆、自らに定められた宿命に抗い続けることはできる。それによって何かが僅かでも変わるのなら、そこに人の生きたことの意味は確かなものとして存在するはずである。
時を同じくして、別の元信者が都心の雑踏の中、システム会社の求人チラシを眺めていた。
そして彼はふと顔を上げ、やる夫の見ていたあのどこまでも澄んだ青い空を見つめる。
基本設定続き
ヒロインは幼馴染であり姉であり母親である
ヒロインはやる夫の生み出した妄想の存在であり、またそれは幼馴染や姉、母親、同級生など過去に出会った様々な女性たちとのトラウマが投影された存在でもある。
ヒロインは成長する
最初は幼女キャラとして登場するが、次第に妹キャラ、幼馴染キャラを経て、主人公にとっての恋愛対象としての女性へと成長してゆく。
大人に戻りたくない「やる夫」と対比する存在であると同時に、成長してゆく「やる夫」の象徴としての存在ともなりうる。
ヒロインは「やる夫」を救うことによって自らの救いと許しを得ようとする存在である。
ヒロインはやる夫にとっての「性への執着」を象徴する存在である。ヒロインとの決別はそれゆえに強い喪失感を伴ったものとなる。同時にその決断は自身の幸福よりも他者の幸福を追求していこうとするやる夫の強い決意を象徴するものとなる。
ヒロインは双子あるいは二重人格
「子を抑圧する母」と「子を庇護する母」の二面性を、リコとリタという異なるキャラクターを通して描くことも検討。毒親のメタファー。
親の過干渉が子供の自立心を奪う。
『あなたのため』と言って娘に抑圧的な規範を強いる母親がいるが、あれは『娘のため』ではなく、結局は『自分のため』である。自分の安心と満足のために子供を束縛している。エリート校への受験を強いる親もまた、自らの願望と理想を子供に押し付けているに過ぎない。子供に習い事を無理やりやらせる親もまたしかりである。結局は『自分ができなかったこと/やりたかったこと』を子供にやらせて自己満足しようとしているだけである。
親は良かれと思って子供に多くを強制するが、それは子供にとって正しいこととは限らない。
そうやって育てられた子供は一生親を憎んで生きることになる。親を許せるようになるとしたら、それは自らが絶望の淵に立ったその時に自身を救うための手段として親を許す時である。人は自分を救うために他者を許す。
やる夫は終始利己的である
やる夫はニートたちの逃避先を奪うが、本人たちは果たしてそれを望んでいたのだろうか。やる夫は社会的な正義と信念に基づいて自堕落な彼らを解放するが、それは自らの満足のための行為でしかない。正しいと思って行ったことであっても、それが本人たちにとって正しいものになるとは限らない。やる夫の選択は親の過干渉と何ら変わらない。
考察
「見上げる」と「見つめる」の違いについて
やる夫が天井を「見上げて」いる時に、やる夫の目の焦点は定まっていない状態にある。天井ではなく、その先の未来と過去を見ている。
無限ループ説
刑務所で刺された「やる夫」は、再度時間を巻き戻して同じ物語を永遠に繰り返しているのではないかと考えることもできる。それは「やる夫」のエゴイズムとナルシシズムの表れであり、また作者にとっての宇宙ひいては輪廻転生への考え方が表れている。
おそらく宇宙はビッグバンによる膨張とその後の収縮を幾度となく繰り返しており、その度に同じ形の宇宙が誕生し、人類の歴史もまた同じように繰り返されているのではないだろうか。そして私たちの人生もまた同じ繰り返しの中にあると考えられるのだ。その繰り返しは円をなし、永遠に途切れることはない。時に8の字を描くその数珠の一つ一つ玉の中に私たちの人生がある。
人は別の他者や他の生物に生まれ変わるのではなく、同じ時代の同じ自分に生まれ変わるのである。だから今の自分が後悔の人生を生きれば、来世でも同じように後悔の人生を生きることになる。だから私たちは、この人生を前向きに捉え直し、満足のいくものとして生き切るしかないのである。
人の運命はこの宇宙の繰り返しの中で少しずつでも変化していくはずである。人はその来世をより良いものにしていくために今を生きているのである。人は成長し世界は変わりゆくのだ。
そうやって私たちは宇宙の記録を塗り替えながら生きている。どん底から這い上がり成長してゆくことが私たちの生きる意味である。歴史の中に名を残すことよりも、この世界の中で変わりゆくことこそが最も気高く貴いことなのだ。
私たちは異なる宇宙の異なる自分たちと共にこの世界を生きている。同じ意志を持つ自分たちのために生きているのだ。
過去へのタイムスリップが可能になるとしたら、それは宇宙間の移動によって実現されるはずである。未来に進めば自ずと過去へとたどり着くだろう。この作品における過去へのタイムリープは、やる夫がその自身の成長によって前へ進んでいることを示唆するものでもある。
やる夫の見ている夢
またあるいは、この物語はやる夫の見ている夢や妄想の世界であるかもしれない。人は後悔に苛まれる時に「あの時こうしていれば」というように過去の可能性に執着するようになる。そしてありもしない可能性に囚われ身動きが取れなくなる。
「あの時こうしていれば別の未来があったかもしれない」という、その未来を「やる夫」は見ているのかもしれないし、あるいは「こうありたい」と前向きに何かを夢見ているのかもしれない。
「夢の中のやる夫が見ている夢の中のまた夢」という多重構造が形成された時、そこに「やる夫」の意識はどのようにして存在しているのだろうか。私たちの意識がこの多重構造の中にないと断言できるものだろうか。
やる夫の考える宗教(哲学)
絶望に至る者たちは人知を超えた存在にすがることでしか生きる意味を見いだせない。それは人々がなぜ神や宗教を信じるかの答えでもある。人々は現実を生きるに足る理由とその希望を求め宗教を生み出したのだ。