Appleの破壊ＣＭに日本人が過剰に反感を覚えている理由は「既存の文化の否定」という側面が強く映ってしまっているためだと思う。※１
実際はこのＡＩ時代における破壊と再生（絶望と希望）の演出であり、加えてあれには外国人がよくやる緊張と緩和の演出（怒っていると見せかけて褒める外国人の面倒臭いノリ）にも通じるものがある。※２
外国人はあの結論に安心できるけど、日本人はあの悪趣味なノリを受容できない（快く受け入れたり、許すことができない）から、至るべき結論もいまいち理解できないし、そもそもiPadという１製品の宣伝のためだけに既存の文化をいいように利用する姿勢にも反感を覚えてしまうのだと思う。
※１ クリエイターが多く反発する理由も、自分たちの存在価値を否定されたように感じたためだろう。物に魂が宿っているから不謹慎に感じるのではなく、正確には、日本人は物に感情移入できてしまう国民性だから、あの破壊ＣＭを不謹慎に感じてしまうのである。「物を粗末にするな」「物に失礼」ではなく「物に感情移入して傷ついた私たちに失礼」というのが私たちの根本の感情である。
※２ 今回の場合はクリエイターに絶望を突きつけ、最後にクリエイターへのエールを送るという形になっている。これは宗教家や活動家、詐欺師、情報商材屋がよくやる手法である。「この世界はこんなにも苦しみに満ちている」「あなた方は不幸な存在だ」「でも私たちに付いてくれば幸せになれる」という風に、絶望の後に希望をちらつかせることで相手をコントロールしようとする手法だ。
iPadを売り込みたいという利己的な目的のために他人の絶望をいたずらに煽る行為に、私たちは反感を覚えてしまうのである。相手を絶望の感情へと追い込んで、相手の衝動を引き出そうとする強引な手法が透けて見えてしまっている。