サツキとメイの家の庭に植えられていたどんぐりが芽を出し、小さな低木へと成長し、それが一夜にして大量の葉を付けた巨大な大木となってゆく印象的なシーンがある。
あのむくむくと成長し続ける巨大な樹木は原爆の「きのこ雲」を暗喩しているように思うのだけど、この事実はみな口にしないためか、意外と知られていないように思う。
戦時中の大人たちは原爆によって巨大なきのこ雲を作り上げたが、戦後の子どもたちは巨大な樹木を育て上げるほどの可能性を秘めている。残酷なきのこ雲を生命の力強さや可能性の象徴として描き換えたところに圧倒された。
究極的には人間がこの世に存在しないことのほうが、自然にとっては良いことなのだが、それは現実的ではないから、せめてでも私たちは自然に畏怖の念を抱きながら生きていく他ないのだと思う。私たちの生活は自然の犠牲のみならず、過去の人々の犠牲とその後の努力のもとに築かれている。