専業主婦が主流だった時代では、専業主婦の立場を守ってくれる「稼げる男性」が強く求められてきたが、共働きが主流の時代では、家事や育児に「協力的な男性」もそれなりに求められていくように思う。
女性は男性に対して「責任」を果たす能力を求める傾向にあるが、前時代ではそれが「家計を支える責任」であったのに対して、現代ではそれが「家庭を支える責任」へと変わりつつある。
今後は「女性を引っ張る」精力的な肉食系のイケイケ男子よりも、むしろ「女性に寄り添う」誠実で協力的な草食系男子のほうがより強い存在意義を持つようになっていくのではないだろうか。
家庭を顧みず出世と成功ばかりを追い求める男性よりも、たとえ地道であっても安定的な生活を維持してくれる男性のほうが、現代の格差甚だしい資本主義社会の構造には合っているように思える。格差社会では成果を出せる野心的な肉食系男子はもはや手の届かない希少な存在だ。見掛け倒しのハズレくじを引いてしまうリスクも高い。このような社会では手堅い存在である草食系男子の需要もそれなりに高まっていくように思える。
女性の専業主婦志望は依然として強いが、フェミニストやネオリベラリストが求めた「女性も社会に出てバリバリ働くべき」という価値観は同調圧力のごとく根付きつつある。肉食系男子への需要は草食系男子のそれを大きく上回っているが、今後はそれも社会構造の変容につれて徐々に変わってゆくのかもしれない。
女性の社会進出は草食系男子のマジョリティ化を後押しし、肉食系男子はマイノリティ化していくだろう。あるいはそもそも新自由主義的な社会構造が稼げる野心的な男性をマイノリティにし、その結果として女性が社会に進出せざるを得ない状況が生まれたという見方もできるだろう。そして格差社会の中で物欲や出世欲、競争心を捨てた男性は草食化して今に至ったというわけである。
今後は女性の生きづらさに理解のある優しい男性を装ったエセ草食系男子も増えていくことだろう。受け身で控えめな天然物の草食系男子よりも、優しさアピールに徹する露骨な男性のほうが案外ウケは良いのかもしれない。※1