譜面作成ソフトで作曲するスタイルは、あまり一般的ではないような気もしますが、個人的にはかなり合理的なスタイルなのではないかと感じています。
譜面表示では少ない表示領域に多くの情報を詰め込むことができるため、その網羅性の高さが強力なメリットとなっているように思います。譜面表示は抽象的な表現形式でありながらも、そこから読み取れる情報には強い奥行きと具体性が伴うのです。譜面というのは数式やソースコードのようなものなのではないでしょうか。
反復記号を用いれば繰り返しの多い冗長的な展開をスッキリと表現できますし、音量の変化は強弱記号やクレッシェンドで簡潔に表現できます。ストリングスの奏法も簡潔な演奏記号で指示できます。その他のアクセントやアーティキュレーションについても同様です。音程の把握も容易で明確です。ハーモニーを奏でる複数の楽器を同時に余裕を持って閲覧・編集することもできます。そしてそのような様々な情報を一枚の小さなビューで概観できることが譜面表示の何よりの魅力となっています。
問題は、譜面上で表現できないような細かな音の強弱や発音のタイミング等を指定できる楽譜作成ソフトが少ないことですが、その点は今後の発展に期待したいところです。個人的には和音を形成する複数の異なるパートを一つの五線譜上に集約できるような機能(※1)もあれば完璧だと思います。
楽譜作成ソフトによる作曲法はDTM音楽家の価値観を変えてしまう程の可能性を持っているように思うのですが、楽譜作成ソフトの低機能さ・制限の多さ、人々の抵抗感ゆえになかなか受け入れられない現状が続いてきたように思います。ただ近年ではMuseScoreが作曲者向けの機能に力を入れ始めたり、Steinbergの「Dorico」やAvidの「Sibelius」、PreSonus(Studio One)の「Notion」など、各社が続々と楽譜作成ソフトの開発を強化してきています。まさに発展途上の分野であり今後の展開が楽しみです。