五線譜の音符の位置とその音程を脳内で一致させるためには相当な慣れが必要になると思う。
初心者の内でも「ド」の音符くらいならパッと見で把握できるかもしれないが、それが「ミ」や「ファ」の音符ともなれば、途端に音程の読み取りは困難なものとなってしまう。読み慣れない左手パートやベース譜などに用いられる「ヘ音記号」の譜面ならなおさら面倒なものとなる。
だから最初の内は基準となる「ド」の音符から「どれだけ音程が離れているか」という方法で音符の音程を把握することがほとんどなのではないだろうか。
たとえば五線譜の一本目の線(第一線)に置かれた音符は、その下にあるおなじみの短い下第一線の「ド」の音符から数えて3音離れた位置に置かれているから、「1(ド)・2(レ)・3(ミ)」と一音ずつ数えて3つ離れた「ミ」の音程であると判断できるだろう。
同じように二本目の線(第二線)に置かれた音符は、下第一線の「ド」の音符から数えて5音離れた位置に置かれているから、「1(ド)・2(レ)・3(ミ)・4(ファ)・5(ソ)」と一音ずつ数えて5つ離れた「ソ」の音程であると判断できる
多くの初心者はおそらくそのような方法で音程を読み取っているはずである。
ただこれだと時間が掛かってしまうので、私は1つ飛ばしで音程を数えるようにしている。
つまり「ド・レ・ミ・・・」ではなく「ド・ミ・ソ・・・」と数えるのである。
五線譜の線の上に置かれた音符は「ミ・ソ・シ・レ・ファ」という具合に「ド」の音から1つ飛ばしの規則で音程が並んでいる。だから「ド・ミ・ソ・シ・レ・ファ・ラ・ド」の音階を頭の中で暗唱できるようになれば、あとは基準となる「ド」の下第一線から何本先の音程であるかを数えれば良いということになる。
例えば、五線譜上の第二線は下第一線の「ド」から3本先の線だから「1(ド)・2(ミ)・3(ソ)」と一本ずつ数えて「ソ」の音程であるということが分かる。
では五線譜の線と線の間の音はどう把握すればいいのか。
その場合は短い下第一線の「ド」より一音上の「レ」を基準にして「レ・ファ・ラ・ド・ミ・ソ・シ・レ」と数えれば良いだけのことである。基準値こそ異なるが、線上の音符を把握する方法とやっていることは同じである。
または線間の音程を「線上の音符から一音上げ下げした音」として捉えることもできる。例えば第一線と第二線の間にある「第一間」の音は、第一線から一音だけ高い音であるから、第一線の音程が分かれば自ずと第一間の音程も把握できるということになる。つまり、第一線は下第一線の「ド」から数えて2本目の線だから「1(ド)・2(ミ)」と数えて「ミ」の音をまず把握し、そこから一音上の音が第一間の音程すなわち「ファ」である、といったようにして音程を把握することができるというわけだ。
いまでこそ下第一線の「ド」を基準にして音符を数えているが、慣れてくるとこの基準となる音符がどんどんと増えていくようになり(そしてその基準となる音符から数えることができるようになる)、最後にはこの手法に頼ることなく、直感だけで大半の音程を瞬時に把握できるようになる。この手法はあくまでその直感が身に付くまでの一時的なものであることに留意してもらいたい。
なおこの手法を用いれば左手パートやベース譜で用いられる「ヘ音記号」の五線譜も同じ手順で読み取ることができるようになる。その際は上第一線の「ド」から下向きに「ド・ラ・ファ・レ・シ・ソ・ミ・ド」を読めば良い。
線間の音程を把握したい場合は、1オクターブ下の「ド」を基準にして上向きに「ド・ミ・ソ・シ」、そして下向きに「ド・ラ・ファ・レ」と数える。もっとも上第一間の「シ」は上第一線「ド」の下であるから、わざわざ下の第二間「ド」から数える必要はない。何なら、その「シ」を基準にして、下向きに「シ・ソ・ミ・ド」と数えて他の音符を把握してもよい。
この手法を用いる上で重要なのは、一つ飛ばしの音程の順序を頭の中で暗唱できるようになっておく必要があるという点だ。「ド」次は「ミ」、「ミ」の次は「ソ」というように、基準となる音程の次に何の音程が鳴るかを頭の中で想像できるようにしておく必要がある。「ドミソシレファラドミソシレファラド・・・」「ドラファレシソミドラファレシソミド・・・」と頭の中で音程を意識しながら何度も繰り返し唱えてみるのが良い。
「ドレミファソラシド」の順序は既に覚えているだろうから、それと同じようにして「ドミソシレファラド」も覚えてしまえばいい。その際は音程感を意識しながら覚えると良い。そうすれば音感も身に付くし、順序も忘れにくくなる。
慣れてくると第一線の「ミ」を基準に「ミソシレ…」と数えることもできるようになる。第五線の「ファ」を基準に下向きに「ファレシソ…」と数えることも可能だ。「レミファソラシドレ」「ファミレドシラソファ」を空で言えるようなら同じことが出来るはずである。
とにかく音程感を意識しながら覚えることが重要だ。そうすればその音程感を頼りに暗唱することができるようになる。これはアルファベットを歌で覚える時のそれと同じことである。
念の為もう一度伝えておくが、この手法はあくまで音符に慣れるまでの一時的なものであり、最終的には譜面上の音符をパッと見ただけでそれが何の音程であるかを瞬時に把握できるようにならなくてはならない。
Have a nice day.