「DANCE → R&B → HIPHOP」流行の繰り返しについて

小室哲哉がダンスミュージックをメジャーにした時代の後にR&Bのムーブメントがやってきて、その次にヒップホップの時代が到来した。

その後、中田ヤスタカがクラブミュージックを再度メジャー化し、遅れてやってきたEDMブームも長い間続いて、今ではR&Bが全盛を極めている。

だから次はまたヒップホップの時代がやって来るのではないだろうか。

海外では既にヒップホップが再燃しているように感じるし、日本ではラップとはまた趣の異なった韻を踏む文化が異常なまでに持て囃されていたり、若者向けの音楽では歌詞とリズムの調和を重視する文化が主流となっているように感じる。かつての電波ソングブームをも彷彿とさせる。そう考えるとヒップホップはブームの真っ只中にあるどころか、むしろもう終わりに近づいている段階にあるのかもしれない。

「革新 → 保守 → 尊重」の過程

DANCE時代

クラブミュージックサウンドの時代は主に革新性で人々の好奇心を刺激するような音楽が溢れる。真新しさが求められる時代だ。異次元の音楽でありながらも黒人音楽の影響が随所に感じられる。この時代は既存の常識を変える革新の時代といえる。テンションの高いアップテンポの曲が多い印象を受ける。歌詞の内容に乏しい能天気な印象を受ける。

R&B時代

リズム・アンド・ブルース再燃の時代は先のDANCE時代の流行と技術を受け継ぎながらも、黒人音楽の要素をより強く押し出そうとする。伝統的なグルーブと演奏技法を全面に取り入れて西洋DANCE勢との格の違いを見せつける。この時代は伝統を取り戻そうとする反発の時代といえる。おしゃれなミドルテンポの曲が多い印象を受ける。

HIPHOP時代

ヒップホップの時代はR&B時代の音楽性やDANCE時代のテクノロジーに影響を受ける形で文化が発展する。何世代も前のR&B時代の資産を引用・アレンジする文化が強くなる。リスペクトの時代だ。歌詞が重視され、文化・文脈が重視され、音楽性よりも文化性・大衆性がより強くなる。この時代は一連の文化の成熟が果たされる時代といえる。ゆったりとしたダウンテンポの曲が多い印象を受ける。

R&BとHIPHOPの発展について

クラブミュージックの流行は割と長く続いていくように思うが、R&Bの流行に関しては全盛を迎える間もなくすぐさまヒップホップ文化が台頭し、両者は平行して発展していくという印象を受ける。

DANCE時代の流行を受けて台頭したインテリ勢とサブカル勢が両文化を支える形となっているようにも思える。

曲のテンポが流行の時代を追う毎にゆっくりと落ち着いたものになってゆくのは、前時代の流行に対する反動があるためだろう。熱狂が冷めたり、速いテンポに飽きてしまったりすることで落ち着いた曲が求められるようになっていくとも考えられる。あるいは新たな流行や価値観の訪れに伴いこれまでの曲が急に格好悪く感じられるようになってしまうこともあるかもしれない。今の時代にハイテンションでアップテンポの曲がダサく感じられてしまうのは、前時代のステレオタイプなパーティーピープルたちの狂喜乱舞する姿が思い出されてしまうためではないだろうか。不景気なヒップホップ時代を耐え忍ぶ現代の人々からすれば、当時の彼らの浮き浮きとしたバブリーな姿は嫌悪と軽蔑の対象にしかならないのだ。

次のDANCE時代的流行の訪れはこの世代の循環が果たされるまで掛かりそうだ。HIPHOP的時代のもたらす飽和と停滞もまたこの世代の循環が解消してくれる。

Kawaii Future BassとR&B HIPHOP的流行

余談ではあるが「EDM → Kawaii Future Bass」の流れはこの一連の発展を早々に体現してきたようにも感じられる。

カワイイ・フューチャー・ベースというジャンルにR&B的な文化はあまり感じられないが、少なくともR&B的と思わせるような雰囲気(それは主にR&B的なコード進行の多用によるものや、ファンクの素養を持ったアーティストの存在感によるもの、同様の素養を持った商業作編曲家の参入によるもの)が感じられる。

ゆったりとしたドラムのビートにメロディーラインを抑えた歌を乗せる言語性重視のスタイルはそもそもヒップホップ的であるし、サブカルチャーとの繋がりや大衆性も高まりを増している。

このフューチャーベースのムーブメントはEDMという流行をミクロな世界として捉えた場合における「停滞と衰退」を象徴する現象であると言える。これはフューチャーベースに限らず、チルアウト的なトロピカルハウスや、ヒップホップ的なトラップの流行についても同様のことが言える。そしてこの手の流れが始まった頃にはもう全体のブームは下火を迎えているのである。

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