なんかITエンジニアに憧れる大人が増えているみたいだけど、あの空気ほんと何なんだろうね。
他人の成功体験に惹かれて興味を持った人とか、今の仕事がキツくてIT業界に一筋の希望を見出している人とか、スキルのない無職・ニートから脱したい人とか、動機は色々あるんだろうけど、理想と現実は異なるからね。現実の社会では異世界転生モノみたいに上手くは行かないから。
プログラマーは頭脳労働でデスクワークだから悠々快適で超ラクラク、とか思われてるみたいだけど、そんなこと全然ないから。
フリーランスやクラウドワーカーだって、空いた時間にチョチョっとやってハイ完了、みたいな世界じゃないから。
キラキラな幻想に魅せられて、まんまと売り手のマーケティングに乗せられないように注意してね。
IT業界は激務
IT業界がブラックの代名詞なのは昔から言われていることだからね。
今の時代にITエンジニアへの転職を勧めているネット上の人たちとか、オンラインサロンとか、有名なユーチューバーはその事実を隠しているからね。そもそも経験者でもないのに、広告収入を目当てにIT業界への転職を勧めている人とかもいるから。あとIT業界のことを悪く言う投稿に対して必死に反論する情報商材屋とかも頻繁に見かける。
ああいうのをポジショントークっていうんだよね。本当に無責任な人たちだよ。
あいつら精神論で人をその気にさせようとするんだけど、IT業界は気力と能力があればどうにでもなるとか、そういう甘い世界じゃないから。
自分一人の力ではどうにもならないのがこの業界だからね。
無能な上司の見積もりの甘さや、他人の失敗や遅れが原因で、理不尽な長時間残業を強いられるのがこの業界のお決まりだからね。
終電まで残業することを前提にスケージュールが組まれることも当たり前にある。
最初のうちは定時で帰れていても、想定外のトラブルや仕様変更が起こるたびにリスケジュールが発生して、残業地獄に陥る。1人日が8時間ベースではなく12時間ベースになり、時空が歪み始める。
休日出勤だってある。
人を増やさず労働時間を増やすのがこの業界だから。
そもそも人を増やせば仕事が楽になるという単純な世界でも無いからね。そこが建設業や製造業とは違う厄介なところなんだよね。
他人の失敗や遅れを周りの皆で補い合うのがこの業界のルールだよ(他の業界でもそれは同じだろうけど、IT業界はこれが頻繁に起こる)。優秀な人ほど多くの作業を押し付けられるからね。君たちは間違いなく、余計な仕事を背負わせる側になるからね。
IT業界はデスクワークだから楽、みたいな風潮があるけど、むしろ忍耐力が求められる仕事だし、体力的にも精神的にもジワジワと応えるキツい仕事だからね。短距離走を強いられる肉体労働のブルーカラーとは違って、頭脳労働のホワイトカラーは長距離走を強いられる。身も心もボロボロだからね。
転職やうつ病で辞めていく同僚や外注のエンジニアを何人も見てきた。「うつ病で辞めていくITエンジニア」は決して都市伝説なんかじゃないからね。
人手不足という罠
「人手が足りない」なんていうのも詭弁だよ。欲しいのは専門的な知識を持った将来性のある若いエンジニアや、高度な技術や経験を有したエンジニアだからね。
あと人手不足とか言ってるけど、あれは現場に人が足りないんじゃなくて、新たなブラック案件に送りつけるための人材がもっと欲しいという話でもあるんだよ。豚や魚の供給量を増やせば取引先の数や売上を増やせるというのと同じで、結局は経営側の都合だからね。
だから、たとえ人手不足が解消されたとしても、現場の負担は変わらないままなんだよ。むしろ供給が増えれば、それだけ安売りが起こって、よりキツい労働を強いられるようになるだけだよ。
この業界の労働環境は悪くなる一方だよ。競争社会では常態化した労働環境は容易には改善されないからね。
ITエンジニアの年収が高いのは残業が多いから
IT業界の年収が他業種の年収と比べて高いのは、残業代が加算されているからなんだよね。
それだけ残業が多い業界ということ。
中には「みなし残業」と言って、給料に固定時間分の残業代が含まれている会社もある。その場合は固定時間を超えた分の残業代は出ないからね。
本来は出るはずなんだけど、45時間を超えた分しか支払われなかったり、時給換算すると最低賃金以下の額だったり、マネージャーへの申請が毎日必要だったり、変な努力目標や圧力みたいなものを課されて実質的にサービス残業を強いられている派遣の人もいたよ。
残業をしないように頑張ればいいとか、残業しない月があれば得だとか、みんな思うかもしれないけど、実際はそう上手くは行かないし、チーム内でのフォローや同調圧力もあるし、それが分かってるから会社はワザと固定残業代制を取り入れているんだよね。
「裁量労働制」や「研究職」「管理職」の場合は残業代が出ないことも多い。企画部直属のフルスタックエンジニアが研究職だからという理由で超過分の残業代が出ないケースもあった。年収は500万円以下。年収1000万円なんかじゃないからね。
IT業界は夢の世界ではない
こんな業界にいても良いことなんて無いんだよ。
毎日夜遅くまで残業をして、肉体的にも精神的にもボロボロになるからね。
自分の自由な時間も、勉強する時間も作れない。
まとまった時間が作れないから新しいことにも挑戦できない。そもそも精神的に消耗する仕事だから、何もやる気になれなくなる。
家に帰ってもクタクタで何もする気になれないから、コツコツと勉強することもなく、日々の蓄積もないまま時間だけが過ぎていく。
だからみんな業務中にインターネット検索で調べながら見よう見まねでシステムを作っている。「○○完全に理解してます!(わかってない)」という人たちがこの業界でやっていけるのは、それを許容してしまう業界の怠慢と甘えがあるからだよね。
船底に空いた穴の直し方を知らない人たちが船を動かしている。これでは船が沈むのも無理はない。
今の仕事が嫌でIT業界に期待を抱いている人たちは、その気力を別の未来に向けたほうがいいよ。
IT業界に飛び込んだらその気力も未来への期待感もすべて失われて立ち上がれなくなるかもしれないから。
あなたたちにはまだチャンスも気力もあるけれど、IT業界に朽ちた私たちにはその気力さえ残っていない。
ただ毎日ゾンビのように惰性で動いて食べて寝るだけ。
そして最後には「田舎で暮らしたい」とか言い出すからね。
今に「農業で自給自足の人間らしい営みに回帰したい」とか訳のわからないことを言い出すからね。
いやむしろそれが正解なのかもしれないね。